社会風刺と哲学談義が盛り込まれたSFアドベンチャー

「私立探偵ダーク・ジェントリー」がNetflixで配信されていますが、同じ原作者ダグラス・アダムスで忘れてはいけないのがこの映画「銀河ヒッチハイク・ガイド」です。

SFっちゃSFなんですが、おふざけがすぎる。でも、そのわりに社会を皮肉ってたり、テーマが哲学的だったりと個性的な作品です。そして、「私立探偵ダーク・ジェントリー」を見た方はわかると思いますが、世界観はぶっ飛んでます

私はこのぶっ飛んだ世界観が大好きなんですが、社会風刺や哲学的なテーマが盛り込まれてるところもまたとても魅力で、見てると脳みそがうずうずします。これ何を表してるんだろ〜とか何を伝えたいんだろ〜とか考えるとワクワクします。

例えば、主人公の家がいきなりバイパス工事で取り壊されたかと思ったら、地球自体が宇宙のバイパス工事で破壊されてしまいます。工事業者に掲示を見ていない方が悪いと主人公は言われるのですが、その言い分をそのまま宇宙人にも言われます。それを観ていると、「因果応報を表しているのか!」なんて妄想が無限に広がります。

豪華な俳優陣が扮したシュールなキャラクターたちに魅了される

「銀河ヒッチハイク・ガイド」では、シュールでヘンテコな宇宙人がたくさん出てきます。この宇宙人たちも社会への皮肉が感じられてまた魅力的です。

特に、書類がないと動かない、言われたことを言われた通りにするのが得意な官僚的な宇宙人は連想の宝庫です。しかも、彼らの星には、何かを考えると頭を叩いてくる生物が住んでいます。何も考えずに言われた通りにすることが求められる、まるでどこぞやの行政や企業で働く人々を宇宙人として描いているかのようです。

そして、他にも人間の本質をプログラムしたら悲劇的な人格になってしまったロボットや人間の究極の問いを考えるスーパーコンピュータなどが登場します。なんか深そう…な気がしてきませんか?

主人公たちは、スーパーコンピュータが考える人間の究極の問いを追い求めて宇宙を旅するのですが、見ているうちに「銀河ヒッチハイク・ガイド」という作品自体人間の一生を描いているんじゃないか的な壮大な感覚に襲われます。「生きることは問いをさがす旅なのかもしれない!」と思うのです。

しかし、登場人物たちのドタバタを見ているとふと我に返って、いやそんなにこの映画深くないかと思い直す気にもなったりします。この映画の深いんやら、浅いんやらわからないところが最高なんです。

そして、「銀河ヒッチハイク・ガイド」は、出演者が豪華です。英国俳優陣オールスターズ。特に声で出演しているアラン・リックマンとヘレン・ミレン、下半身のない宇宙人が似合うジョン・マルコヴィッチ、そしてぶっ飛んだ世界観には欠かせないビル・ナイは見る価値ありです。

「生命、宇宙、すべての答え」とは?

観た後には、主人公たちが追い求めた究極の問いの答えについて疑問が湧きます。「生命、宇宙、すべての答え」です。映画の中でスーパーコンピューターが答えを教えてくれるのですが、その答えがどういう意味?って感じなんです。

ちなみに、「生命、宇宙、すべての答え」をグーグルで検索すると映画と同じ答えを教えてくれます。そして、iPhoneのSiriに「生きるって何?」と質問するとやはり同じ答えをしてくれます。グーグルもSiriも優秀で驚き。映画を観た方はぜひお試しください。

「生命、宇宙、すべての答え」は、映画の中で答えを聞いても、グーグルやSiriに答えを聞いても、?が飛びまくります。私もこれどう意味なんだろうとしばらく考えていたんですが、ビル・ナイが映画内で言うセリフで解釈するのが1番すっきりするんじゃないかと思いつき落ち着きました。

つまり、「生命、宇宙、すべての答え」「生きるって何?」の答えは、おそらく「何の意味もない」のでしょう。

?が飛びまくるくらい意味のわからない答えに、そもそも意味なんてないのです。生きることや生命、宇宙、すべての答えに意味なんてないと原作者は伝えたかったのではないでしょうか。意味を考えるよりも、ただ生きることが大切なんだと。

映画を観ていない方は、ここまで読んで頂いてこんがらがったかもしれません。そのこんがらがりは映画を実際に観て解決してみて下さい。

たくさん笑えてアホくさいけどどこか哲学的で、観た後にニーチェが読みたくなったりならなかったりするかもしれない素敵な映画です。

銀河ヒッチハイク・ガイド(2005年/イギリス・アメリカ)
監督:ガース・ジェニングス
出演:マーティン・フリーマン、モス・デフ、サム・ロックウェル、ズーイー・デシャネル、アラン・リックマン、ヘレン・ミレン、ビル・ナイ他