PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、通常の人間の許容範囲、経験範囲を超える、強烈なストレッサーにさらされることによって発症する障害です。強烈なストレッサーには、事件、事故、戦争、災害などが当てはまります。日本では、1995年の阪神淡路大震災の後、この障害について広く知られるようになりました。現在では、世界各地で戦争、災害、テロ、犯罪が起こるたびに懸念される障害となっています。

症状としては、突然辛い記憶が蘇る、夢で辛い出来事を再体験する、神経過敏な状態が続く、辛い記憶と結びつく状況や場面を避ける、感情や感覚が鈍くなる、睡眠障害が起こるなどがあげられます。

強烈なストレッサーになりうる辛い出来事に遭遇した後は、誰でもこのような症状がみられます。しかし、このような症状が数ヶ月続いたり、数ヶ月続いて悪化したりするようなことがあれば、PTSDの可能性があるため、専門家に診てもらう必要があります。

PTSDの治療は、ストレッサーによって受けた心の傷を癒し、辛い症状を改善していきます。心の傷を癒すためには、あえて辛い記憶と結びつく状況に身を置き克服を促す心理療法や、同じ苦しみを味わった人々と語り合って癒し合うグループ療法などが行われています。また、睡眠障害や神経過敏などの辛い症状を改善するためには、薬物治療が行われます。

数多くの映画で描かれるPTSD(心的外傷後ストレス障害)

PTSD(心的外傷後ストレス障害)について取り上げた映画作品は数多く存在します。というのも、戦争、犯罪、事故、災害などを描いた作品は非常に多く、それらの被害にあった人々を描いた場合、PTSDは切っても切り離せないテーマとなっているからです。

映画を見ても、想像しても難くないですが、PTSDの原因の中でも特に戦争は人の心に大きな傷を残します。関わった人々の悲痛や苦悩は計り知れません。戦争は、自然災害と違って、人の手によって始められるものです。このような障害で苦しむ方を少しでも減らすためにも、戦争のような悲劇は人の手によってもたらされてはいけません。映画はいつの時代になっても色褪せず、私たちにそう教えてくれています。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)を描いた映画4選

ここでは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を描いた数多くの作品の中から、趣の違った4つの作品を選びました。戦争によるPTSDが多くなっていますが、どれも違った側面から人間の強さと弱さを描いており、一生に一度はみる価値がある作品です。

1.ソフィーの選択(1982年/アメリカ)


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ピューリッツァー賞を受賞したウィリアム・スタイロンの小説をアラン・J・パクラ監督が映画化した作品です。ナチスのホロコーストで苛酷な選択をすることを強制されたユダヤ人女性の苦悩が、作家を目指す若者の視点から描かれます。自らの選択によってその後苦しみ続ける女性をメリル・ストリープが演じ、アカデミー賞主演女優賞を受賞しました。戦争が生み出した狂気によって人生が破綻していく生々しさを表現する彼女の演技は、一見の価値ありです。

2.タクシードライバー(1976年/アメリカ)


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マーティン・スコセッシ監督が、ニューヨークのタクシードライバーを主人公にし、1970年代社会の狂気と混乱を描いた傑作です。主人公を演じるのは、ロバート・デ・ニーロです。ベトナム戦争帰りの青年トラヴィスは、戦争の後遺症による不眠症でまともに就職できず、夜の街のタクシードライバーとして働いています。彼は社会に苛立ちを感じながら、やがて闇ルートから銃を手に入れ、ある1つの計画を考えていきます。戦争によるPTSDを扱った作品としては、最も古い部類に入ります。数々の賞を受賞したこの作品が、戦争による悲劇を社会問題として世界に伝えた功績はとても大きいです。

3.バッファロー’66(1998/アメリカ)


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ヴィンセント・ギャロが監督と主演を務め、アーティスティックな映像でカルト的人気を誇る作品です。愛を知らずに育ち復讐に燃える男と彼の繊細さに惹かれていく女のラブストーリーです。ヒロインをクリスティーナ・リッチが演じています。5年の刑期を経て出所したビリーは、両親に対して、仕事で実家を離れていた、しかも結婚したと偽っていました。彼は実家に戻るため、通りすがりのレイラを拉致し妻を演じるように強要します。戦争や災害でなく、親の愛情不足でも心に大きな傷を作るということが繊細に描かれています。映像美とストーリーを楽しむこともできる作品です。

4.アメリカン・スナイパー(2014/アメリカ)


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クリント・イーストウッド監督が、イラク戦争で活躍した狙撃手クリス・カイルの回顧録を映画化したアクション大作です。仲間を守るため160人以上を射殺した男の葛藤と苦悩が描かれています。クリスは同時多発テロに衝撃を受け、祖国を守るために貢献したいとイラクに出征します。彼は、精度の高い狙撃で味方の窮地を救う活躍をした後無事に帰国、家族とともに平穏な日々を取り戻そうとしますが、戦争の苛酷な記憶に苛まれていきます。帰国後の兵士のPTSD、そして戦争が生み出す悲惨さを痛烈に感じさせるラストは必見です。