自立した女性リーダーを描く新しいプリンセスムービー

小さい頃からジブリよりもディズニーが好きで、「白雪姫」や「シンデレラ」、そして「美女と野獣」などのディズニープリンセスで育ってきた私にとって、「アナと雪の女王」を観たときは衝撃でした。

お姫様もう王子様を必要としてないじゃん!!みたいな(少しネタバレしてゴメンなさい)。

女性の自立とかフェミニズム的な考え方は、私も働く女性として嫌いではないです。むしろ、トランプ大統領が当選したときはガックリしたし、ガラスの天井はぶち破って、これからの社会は女性が活躍しやすいものになってほしいと感じています。

しかし、「アナと雪の女王」を観たときは、なんか急にお姫様がたくましくなっていて少し寂しい感じがしました。

そして、女性は大人になればなるほど、白馬に乗った王子様なんていないという現実に嫌でも直面するんだから、映画の中だけでもお姫様は王子様と幸せになってくれよという気持ちがふつふつと。

しかし、「モアナと伝説の海」を観たときは、そんな複雑な気持ちにはなりませんでした。確かに王子様は出てきませんが、一人の女の子の自立と成長を描いた冒険譚として楽しめました

「アナと雪の女王」ほどわかりやすく男性を悪者にしていないし(私はおそらくその露骨なフェミニズム押し出し感が苦手だったんだと思います)、男性も女性も楽しめる冒険映画としての面白さをなくさずに、自然に女性がリーダーになれる時代を応援している感じがとても好きでした。

海は続くよどこまでも

「モアナと伝説の海」は、制作チームが舞台となるフィジーやサモア、タヒチの伝説や文化を実際に現地で取材して作られたそうです。それを聞いてから見ると、映画の中で出てくる海賊とか巨大な深海生物とか、それぞれどこかの国の伝説なのかなぁと連想しながら見ることができます。

そして観ていて感じていたことは、どこの国も伝説とか昔話って似ているのかなと。

最初にモアナが亀を助けるシーンでは「浦島太郎」かと思ったし、海や島を作った巨人の神様が登場する設定はダイダラボッチを連想しました。ダイダラボッチは「もののけ姫」にも登場する巨人ですね。山や湖を作ったと日本の各地で伝承されています。

余談ですが、「モアナと伝説の海」は最後の展開が「もののけ姫」に似ています。最後モアナがサンに見えました。モアナはサンと違って人間の味方ですが。設定としてはサンとアシタカ足し合わせた感じがモアナかもしれません。

そんな伝説や昔話を考えながらこの映画を観ていると、国や人種は違ってもルーツは一緒というか、人間みんな同じだなという広い気持ちになれます。人類みな同じ。さすがディズニー。人類みな平和。

自分は何者か、いざ自分探しの冒険へ

ディズニー映画の登場人物は何かしら葛藤を抱えて生きています。ラプンツェルは親離れの葛藤を抱えていたり、エルサは自分を肯定的に捉えられなかったり。

「モアナと伝説の海」では、モアナは自分の生き方はこれでいいのか、そして自分とは何者かを問い続けています。もはや「モアナの自分探しの旅」というタイトルでもいい感じです。

そして、自分の心の声に耳をすませるんだ!という素晴らしく、ディズニーらしい夢と希望に溢れた答えを導き出します。ディズニーはこのキラキラした世界を徹底して作り上げられるからすごいと思います。

そして、モアナの他にもう一人葛藤を抱えているのが、半神半人のマウイです。彼は人間に愛されたい一心で、人間に島をあげたり、太陽をあげたり、風をあげたりします。

マウイと同じようなことをしている人は多いです。人から好かれるためにモノを与える人です。お金、豪華な食事、プレゼント。若い女性に貢ぎまくるおじさん、ホスト通いする奥様、彼女彼氏への効果なプレゼント。私も好かれたい人にお菓子あげたりします。

好意を持つ人に対してモノをあげることを悪いことではありませんが、それしかできなくなってしまうと辛くなります物理的に何かを与えることでしか、人に好かれる方法がわからないというのは悲しいです。

なぜなら、モノをあげて喜ばせても人の気持ちは手に入らないからです。マウイもそのことに気づいて、虚しくなります。でも、そこに自分で気づいているのがマウイのすごいところです。

マウイがこのようにモノに依存している証拠としてもう一つ、彼が心の拠り所にしている神の釣り針があります。この釣り針にはマウイを変身させる力があり、これがあるからマウイは人間に島をあげたり、太陽をあげたりすることができていました。彼は「これ(釣り針)がなくなったらマウイじゃなくなる」と言います。

自分が持っているモノに依存してるんですね。でも、こういう人も結構多いです。資産や地位、学歴など自分の持っている「釣り針」に固執している人いますよね。みんな、それがなくなったら自分じゃなくなると感じています。なくなったときにうつ病になったりする人が多いんですね。例えば、会社の地位に固執していた人が会社をクビにされ、自分という存在に意味が見出せず自殺してしまうというケースもあります。

そのような状況の人はマウイと同じように、「釣り針がなくてもマウイはマウイ」と気づく必要があります。ありのままの自分を受け入れることが大切です(アナ雪よろしく)。これって難しいんですけど。

でも、難しいけどそういうことが大切でそういう理想に近づきたいなと思わせてくれるのが映画です。だから映画は素晴らしいと思います。「モアナと伝説の海」しかり。

「モアナと伝説の海」はそんな自分を見つめ直すきっかけをくれつつ、美しい映像で現実逃避させてくれる映画です。綺麗な海に旅行に行きたい…南の島に行きたい…そして、ドウェイン・ジョンソンの歌声が耳から離れない

実写化してもマウイはドウェイン・ジョンソンに演じてほしいです。リアルに胸筋を動かすところが見てみたいだけですが。

モアナと伝説の海(2017年/アメリカ)
監督:ロン・クレメンツ、ジョン・マスカー
出演:アウリイ・クラヴァーリョ、ドウェイン・ジョンソン、アラン・テュディック他