英国スパイから名探偵、アメリカの伊達男まで。あなたは誰のスーツ姿がお好き?

スーツの選び方って難しいですよね。ほとんどの男性なら、必ず一度は通る道です。

何を基準にすればいいのか分からないですし、教科書的なスタイルもその時代によってだいぶ異なり(変わり)ます。90 年代はサイズにゆとりがある”アメリカン・トラディショナル”が一般的でしたが、最近ではもっぱら”細め”ですよね。

分からないから適当に選んでくれ、と言ってしまった時や、訳も分からぬままショップの店員さんに話にノッてしまい、数回しか腕を通さなかったスーツを持っている人も多いのではないでしょうか。

そんな悲劇を繰り返さないように、今回はスーツのかっこいい着こなしが学べる映画をご紹介していきます。

なお、スーツ姿がかっこいい映画はたくさんありますし、レビューもまとめも山ほどありますが、重大な欠点があると個人的に思っています。それは取り上げられている大抵の映画では、スーツのスタイルが古くて(今と違くて)、一般人では到底マネできないという点です。

例えば、確かに映画「アンタッチャブル」のアルマーニのスーツもかっこいいですが、今あのスーツをかっこよく着こなすのは難しいですよね。

今回は今週末スーツを買いに行く人にも、役に立てる”今の”スーツ選びの教科書的映画を(独断と偏見で)厳選しました。男性はもちろん、女性の方も目の保養にお役立てください。

スーツは現代の鎧、英国紳士と黒縁メガネ

まずは 2015 年にヒットした映画「キングスマン」です。

この映画は主人公がファッション雑誌の表紙を飾るなど、当時ファッション業界でも話題になりましたね。

当ブログの準レギュラー的存在イギリスのダンディなおじさまこと、コリン・ファース が主演のスパイアクション映画です。表向きはサヴィル・ロウの仕立て職人ですが、裏の顔は世界最強のスパイ機関に属するエリートスパイ、 ハリー・ハート 役を快演しています。

ちなみに別の記事で紹介した「モネ・ゲーム」でも コリン・ファース はハリー役でしたが完全に別物です。余談ですが、「モネ・ゲーム」ではスーツにトランクス姿で高級ホテルを闊歩する コリン・ファース を観れますので、ご興味がある方はぜひ。

話を戻しますが、「キングスマン」では コリン・ファース のキレっキレのアクションシーンが堪能できます。だって原作者がマーク・ミラー、監督がマシュー・ヴォーンというぶっ飛び系映画の金字塔「キック・アス」を成功させたコンビが作ってます。このまま映画レビューをして行きたいところですが、それはまた今度にしたいと思います。

さて肝心のスーツですが、仕立て職人の設定だけあり、全身オーダーメイドで取り揃えられていて、美しい仕立てと共に完璧に体にフィットしているのがよく分かります。

中でもイギリスらしいグレンチェックの生地を使った、ダブルのスーツが登場しますが、あそこまで完璧に着こなせるのはおそらく コリン・ファース だけでしょう。

個人的にはダブルのスーツと言えば、マフィア映画で幹部たちが着ている印象が強いですが、この映画以降、日本でもダブルのスーツを上手く着こなす人が少しずつ増えている気がします。

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鹿撃ち帽は被らず、スマホが堪能な探偵

続いては現代版シャーロック・ホームズが描かれた「SHERLOCK」です。

「おい、映画じゃなくてドラマじゃないか」という声が飛んで来そうですが、日本では映画化(劇場版)になっているのでセーフだと勝手に思っています。ちなみにこちらですね。「 SHERLOCK : THE ABOMINABLE BRIDE - SHERLOCK / シャーロック 忌まわしき花嫁」

現代版シャーロックは、「ドクター・ストレンジ」でマーベルヒーローの仲間入りを果たし、今熱い俳優ベネディクト・カンバーバッチ が演じています。ハリウッド的なかっこよさはないんだけど、かっこいい俳優さんですよね。(貶してません、褒めてます)

ベネディクト・カンバーバッチ が出演していてスーツ栄えしそうな映画は多くありますが、現代的なスーツスタイルを上手く取り入れている「 SHERLOCK 」を選びました。ファッションという概念自体(興味)がなさそうなホームズですが、イギリスのファッションブランドである”スペンサー・ハート”のスーツに身を包んでいます。

”スペンサー・ハート”は伝統的なサヴィル・ロウとラグジュアリーを融合させたブランドで、現代的なのにどこか伝統を感じるスーツが特徴です。かの英国王室のウィリアム王子やイギリスの著名人も好んで着ているそうです。

時代を超えて愛される作品(伝統)を、現代版にリメイク(革新)するコンセプトを表現するために、シャーロック・ホームズに”スペンサー・ハート”を着せるという演出がニクいですね。

また、シャツもタイトで大胆なカッティングなものが多く、ドルチェ&ガッバーナのものを採用しています。どう見ても細い ベネディクト・カンバーバッチ でも、作中でシャツがキツそうに見えますが、どれだけタイトに作られているか計り知れませんね。でもきっと、「英国政府の小さな地位」にあるあの世話役の人が(勝手に)買ってきてくれるんだろうな、とか勝手に想像しています。

ちなみにもう一人、「SHERLOCK」の中でマネしたいスーツの着こなしの人がいます。

そう、シャーロック・ホームズの永遠の宿敵ジム・モリアーティを演じる アンドリュー・スコット です。作中で自分のスーツは”ヴィヴィアン・ウエストウッド”のスーツであることをサラッと話しており、おしゃれ対決でもホームズに負けず劣らずという感じですね。

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バーでナンパする方法まで学べちゃう

さて今度は、ラブコメから行ってみましょう。2017 年のアカデミー賞でも何かと話題だったライアン・ゴズリング と エマ・ストーンが出演した「ラブ・アゲイン」です。

普段からラブコメを好んで見る訳ではなかったのですが、この「ラブ・アゲイン」は緻密に、そして巧妙に準備されたオチがある映画で、純粋に面白かったなと記憶してます。

ラブコメと聞くと、女性が美しくバージョンアップされていく過程を思い浮かべますが、今回は男性(しかもおじさん)が改造されていくので、ある意味新鮮です。

この映画では ライアン・ゴズリング 演じる伊達男のジェイコブが、ファッションとナンパの指南をしてくれるので、モテ男になりたいあなたは必見です。

そんなジェイコブのスーツファッションが、作中ではとてもカッコよくキマってます。スーツにサングラスを合わせて、外でピザを食べてるシーンもありますが、これもなぜかキマって見える程です(なんでですかね)。

また、スーツはアレキサンダー・マックイーンやサンローランといった、ファッション性が強めのブランドで脇を固めていて、ジェイコブの派手さや華やかしさを底上げしている感じです。

フォトショで修正したみたいに、ガチでムキムキな ライアン・ゴズリング が着てもスマートに見えるスーツは、ガタイがいい人が見習うといいですかね。

とりあえずこの映画を観ると、GAPの服を卒業して、ニューバランスのスニーカーを投げ捨てて、筋トレしたくなりますので、ご注意ください。

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映画とスーツはこの人抜きには語れない

やっぱり男に生まれたからには 007 みたいに、最高級のスーツをバシッと着てみたいですよね。ほとんどの男性なら、必ず一度は通る道です( 2 回目)。そんな訳で、続いては世界のスパイムービー「OO7」です。

ご存知 ダニエル・クレイグ 演じる 6 代目ジェームズ・ボンドが、現代におけるスーツスタイルの経典と言ってもいいかもしれない程です。

ダニエル・クレイグ が演じた「OO7 」の 4 作品のうち、最初の「カジノ・ロワイヤル」では、先代のピアース・ブロスナンから引き続きイタリアのブリオーニのスーツを着ています。

それ以降の全作品では、アメリカのラグジュアリーブランドであるトム・フォードのスーツを着用しています。

トム・フォードのスーツやタキシードは、やっぱり男性を引き立たせるシルエット作りが特徴で、あんなにマッチョな ダニエル・クレイグ が超スマートに見える仕立ては一級品ですね。なんで後ろ向きに仁王立ちしてるだけで、あんなカッコよく見えるんでしょうか。

なお余談ですが、トム・フォードは 2009 年に映画「シングルマン」で監督デビューしていて、主演を務めたのが我らが コリン・ファース なので、実はこちらの衣装もイカしてます。

ダニエル・クレイグ 版「 OO7 」スーツのスタイルは見ての通り基本細めで、グレーかネイビーのシングルが主役です。このスタイルは英国スパイだけではなく、ビジネススーツのまさに基本なので、学びやすい教材の一つです(なぜか日本ではブラックスーツばっかりで残念です)。

しかし、細めは最高級ブランドが、最高級の映画と俳優のためにだけに、フルオーダーメイドで仕立ててこそなので、決してピチピチなとこだけマネしないようにしてくださいね。

ちなみに個人的には ダニエル・クレイグ が演じた「 OO7 」の中では、「スカイフォール」が大人版ホームアローンを観てるみたいで好きです。それにミッドナイトブルーの生地にショールカラーのタキシードに、スタッズで留めるシャツ、白のブレイシーズでベルトループなしのトラウザーズを吊るすあたりが完璧です。

また、「スペクター」で MI5 の責任者として登場する C 役で、「SHERLOCK」のモリアーティ役でも紹介したアンドリュー・スコット が出演していますが、相変わらず嫌な奴ですけどスーツが似合ってますので、こちらもご参照あれ。

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まとめ

映画とスーツの関係は、主人公の性格や生い立ち、心理的な背景を表現するために、ファッションブランドのコンセプトを借りてる事が多いんですね。ファッションブランドを通じて、作り手の心情をさらに読み解く事で、映画の深みをより理解できるようになるかもしれませんので、試して観てください。