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統合失調症とは

統合失調症とは、現実と非現実の区別がつかなくなることを最大の特徴とする精神病です。症状は多岐にわたりますが、幻覚や妄想など現実の歪曲化、思考や行動のまとまりの消失、感情の理解と表現の障害、物事を行う意欲の消失などが主にあります。妄想では、「テレビで自分のことが話されている」「誰かに監視されている」「自分の考えが他の人に知られている」などが典型的な症状です。

厚生労働省によると、100人に1人弱がかかると言われており、生涯罹患率の高い病気です。一般的に、思春期から青年期である10代後半から30代で発症します。最近の報告では、男:女=1.4:1で男性に発症しやすく、女性に発症する場合は、男性よりも発症年齢が高いと言われています。

妄想や幻覚などの特徴的な症状から、「普通に会話できなくなる不治の病だ」などという誤った認識を持たれることもありますが、現在では薬物療法や心理社会的ケアが発展したことにより、初発患者の約半数程度は長期的な回復が望めるようになりました。

原因と治療方法

統合失調症の原因は、いまだ明確にされていませんが、環境と体質によると考えられています。統合失調症の素因を持った体質の方が、進学や就職、結婚、近親者の死などのライフイベントに直面したことをきっかけに発症することが多いとみられています。

統合失調症の回復には、薬物療法と心理社会的なケアが必要不可欠です。薬物療法は、現在は入院でも通院でも受けることが可能となっています。心理社会的なケアは、周囲の人々が要となります。統合失調症の患者の方の病気の辛さを理解し、患者の方が自分に否定的にならないよう丁寧なコミュニケーションを心がけることが大切です。

また、周囲の方々自身が「自分のせいで病気になってしまった」と自分を責めたり、負担を抱え込んでしまってはいけません。医療機関や地域社会と適宜連携していくことが求められます。

統合失調症を描いた映画5選

統合失調症は、特徴的な症状を持つ病気です。そのため、誤解されやすく、社会からも孤立しがちです。ここでは、統合失調症を描いた映画を5つ取り上げています。

映画によっては、エンターテイメント性を持たせるため、誇張しているものもありますが、いずれも自分と社会の間で困惑する患者の方とその周囲の人々の葛藤が描かれています。妄想や幻覚といった特異な症状を持ち、周囲からは見えにくい病気だからこそ、映画を通して理解を深めることができます。

1.ビューティフル・マインド(2001年/アメリカ)


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ロン・ハワード監督、ラッセル・クロウ主演でアカデミー賞作品賞を受賞した名作です。ノーベル経済学賞を受賞した実在の天才数学者ジョン・ナッシュの半生を描いています。プリンストン大学の数学科で学んでいたナッシュは、その才能を認められ、マサチューセッツ工科大学の研究所に採用されます。そこで、政府機関から雑誌に隠されたソ連の暗号解読を依頼されるのですが、その任務によって彼は精神を病んでいってしまいます。

この映画で印象的なのは、天才ゆえの苦悩、逃げられない病という困難に直面しながらも、何かを成し遂げられると信じて前へ前へと進んで行く主人公の姿です。挫折や人生の行き詰まりを感じた時に見ると必ず勇気をもらえる作品です。サクセスストーリーでありながら、先が見えないサスペンスの要素もあり、エンターテイメント作品としても楽しめます。ぜひ人生に一度は見ておきたい傑作です。

2.シャイン(1996年/オーストラリア)


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実在のピアニストであるデヴィッド・ヘルフゴッドの半生をモデルに描いたオーストラリアの作品です。主人公は、幼い頃から厳格な父親のもとでピアニストになるべく訓練を受けていました。次第に才能を開花させアメリカ留学のオファーも来るのですが、経済的な理由と自分から息子が離れていくのを父親が拒んだことでオファーは流れてしまいます。しかし、あるコンテストで優勝したことにより、奨学金付きでイギリスへ留学できることになり、主人公は父親の反対を振り切り飛び出していきます。主人公はイギリスで練習に打ち込み、ラフマニノフを弾きこなせるまでに成長するのですが、その後精神に異常をきたしてしまいます。志半ばでオーストラリアに戻り、入院しながら治療を行うことになります。退院後、バーでピアノを再び弾く機会を得ると、彼はその才能から人気者になっていきます。父親のためでなく、自分のためにピアノを弾けるようになっていくのです。

家族との葛藤、志半ばでの病と主人公には苦悩が続きます、しかし、周囲の支えによって幸せを得ていく姿に最後は感動を覚えずにはいられません。

3.ミザリー(1990年/アメリカ)


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スリラーからも1つ選んでみました。スティーブン・キング原作の小説を映画化した作品です。主人公である作家のポールは、自身のベストセラー「ミザリーシリーズ」の最終作の原稿を運んでいる途中に交通事故に遭い、近くに住むアニーという女性に助けられます。アニーは元看護婦で「ミザリー」の大ファンであることもあり、ポールを手厚く看病します。しかし、最終作で小説の主人公ミザリーが死ぬことを知ったアニーは激怒し、ポールを監禁、ミザリーを生き返らせ、新作を書くように脅します。ポールは果たしてアニーから無事に逃げられるのかという物語です。

感情の起伏の激しさ、小説の主人公への異常な執着など、アニーには統合失調症のような症状が見せます。妄想や幻覚の怖さという意味では、同じくスティーブン・キング原作、ジャック・ニコルソン主演の「シャイニング」もあります。こちらは完全にホラーですので、見る際は覚悟を。ただしいずれもエンターテイメント作品ですので、病気に対して偏見を持つのではなく、患者の方からすれば恐ろしい症状なんだという理解に役立てて頂ければ幸いです。

4.路上のソリスト(2009年/アメリカ)


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ロサンゼルス・タイムズ紙の記者であるスティーブ・ロペスがホームレスの音楽家であるナサニエル・エアーズとの交流を書いたコラムを映画化した作品です。記者のスティーブは、街で弦が2本しかないヴァイオリンを弾くナサニエルと出会います。ナサニエルは有名な音楽学校に通っていチェロ奏者でしたが、統合失調症を発症しチェロだけを持って家を飛び出したために、現在ホームレスになっているというのです。ナサニエルに興味を持ったスティーブが彼の生い立ちを記事にすると、感動した読者からチェロが届きます。スティーブはそれを使ってナサニエルに治療を受けさせようと支援を試みます。

この作品では、病気を受け入れられないナサニエルの姿が描かれており、自分が病気だと理解するのがいかに難しいかを感じることができます。そして、支援者側にしても、患者の方にとって一番良い支援とは何かを考えさせられる作品です。ロバート・ダウニー・Jr.とジェイミー・フォックスの演技が光ります。

5.妹の恋人(1993年/アメリカ)


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統合失調症を描いた映画というと、シリアスな内容が多い印象がありますが、この作品はコミカルでピュアでキラキラしたという言葉が似合うヒューマンラブストーリーです。田舎町の自動車整備工場に勤めるベニーは、幼い時に両親を亡くし、妹のジューンと二人で生活してきました。ジューンは両親の死をきっかけに精神的な病を発症し、サムの助けなしでは生きていけない状況です。そんな時、ふとしたことから友人の従兄弟であるサムと二人は一緒に暮らすことになります。サムは変わり者ですが、次第にジューンの心を開いていきます。

ジューンがストレスで精神のバランスを崩してしまったり、ベニーが世話で自分の人生を犠牲にしすぎてしまったり、統合失調症の患者の方とその周囲の人々の苦悩がリアリティを持って描かれています。そんな中でも苦悩で終わらず、コミカルさや明るさを残し前向きさを感じさせるストーリーが秀逸です。若き日のジョニー・デップの魅力も思う存分味わえます。

 

参照:厚生労働省 みんなのメンタルヘルス