精神病院や精神科について映画で学ぶ
近年、ストレスやうつ病、精神病という言葉をよく耳にするようになりました。メンタルヘルスに関わる病気や精神疾患の治療は、病院の精神科、もしくは精神病院で行います。ここでは、患者の収容、医療、保護を行っています。
しかし、精神科や精神病院って内科や外科よりも馴染みがないですよね。どのような病気に対してどのような治療が行われているか知らない方も多いのではないでしょうか。心理学を勉強する学生の方も、精神病や精神病院についてテキストで学んでいても、「実際はどうなの？」とイメージしづらいことも多いと思います。
そんな時は、映画をぜひ見てみてください。映画は心理学を学ぶには絶好の教材です。もちろん映画は、エンターテイメント性を持たせるために誇張して表現されているものもあります。しかし、様々な人の生き方や心の動きが2時間前後に凝縮されており、リアルに私たちに語りかける芸術でもあります。
精神病院を舞台にした映画では、精神病や精神病院について理解を深められる同時に、「普通とは違う」というレッテルを貼られた人々とその周囲の人々の苦悩を見ることができます。「普通ってなんだろう？」とぜひ今一度自分に問いかけてみてください。
精神病院を舞台にした映画5選
ここでは、精神病院を社会問題として扱ったものから、コミカルに風刺したものまで5つ選びました。
1.17歳のカルテ
女性だけの精神病院を舞台に、社会に適応できずに苦しむ若い女性たちを描いた作品です。主人公とその仲間たちは、大人と子どものはざまで揺れ動きながら、生きるとは何か、死ぬとは何かを体当たりで学んでいきます。精神病院という自由を奪われた世界の中で、友情を育みながら主人公たちが成長していく姿は、精神病院という世界を経験していなくとも、自分の青春時代と重ね合う部分を見出すことができるはずです。アンジェリーナ・ジョリーは、この映画でアカデミー賞助演女優賞を獲得しました。
2.カッコーの巣の上で
言わずと知れたジャック・ニコルソン主演の名作です。精神異常を装って精神病院に入院した主人公が、患者の人間性を否定する病院に反発し、入院患者の仲間を励ましながら脱走を企てます。病院側の徹底した管理により無気力を強いられていた入院患者たちが、主人公との交流を通して生気を取り戻していく姿は見る人に感動を与えます。ストーリーは、過去の精神病院で実際に行われていたという精神病患者への人権侵害やロボトミー手術に対して疑問を投げかけます。心理学や精神病院に興味はなくとも、映画史に残る感動的なエンディングは一見の価値ありです。
3.シャッターアイランド
マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演というビッグネームが揃い踏みした作品です。「17歳のカルテ」や「カッコーの巣の上で」よりもエンターテイメント色が強く、ホラーサスペンスとして楽しむことができます。舞台は、重大な犯罪を犯した精神病患者が送られる孤島の刑務所です。精神病院とは少し趣が違いますが、精神病を理由に隔離された異常性をはらむ世界を見ることができます。この作品でも、精神病患者の人間性が問われています。最後のどんでん返しをあなたは予想できるでしょうか。
4.クワイエットルームにようこそ
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松尾スズキ監督が精神病院の隔離病棟を風刺的に描いた作品です。睡眠薬の大量摂取で自殺を図った主人公のフリーライターの女性が入院するところから物語は始まります。作品を通して精神病院の個性的な患者たちを描いており、一見ユーモラスでコミカルな印象を受けますが、最後まで見ると全然笑えません。ほぼ個室で繰り広げられる人間ドラマを見ながら、「普通」という概念がガラガラと崩れ落ちていく感覚を味わえます。
5.12モンキーズ
テリー・ギリアム監督、ブルース・ウィルス主演の傑作SF映画です。精神病院について学べるのは、ドラマやサスペンスだけではありません。この作品のように、ジェットコースター感覚を味わえるSF映画でも十分にその世界観を理解することができます。この作品のテーマは時間と記憶です。主人公は人類絶滅の危機を救うため、未来から過去に送られます。しかし、タイムトラベルの失敗により、目的とは違う時点に到着したあげく、妄想癖を疑われ精神病院に収容されてしまいます。過去と未来、妄想と現実が交錯した物語の中で、誰もが異常というレッテルを貼られる可能性があることを実感できます。「異常は多数派の論理だ」精神病患者役のブラッド・ピットの演技も必見です。
