精神を養うのは交渉しかない。
引用:E・アラン、エミール=オーギュスト・シャルティエ
(19~20世紀フランスの哲学者)
人の精神は他人と交渉することを通じて、養われる。それぐらい、交渉という作業は難しいのだ。
と哲学者は言っています。
確かに内容は何であれ交渉するということは、難しいですよね。
しかし、このご時世、一人では決して生きていけません。が、二人になれば必ず交渉は生まれます。
であれば、失敗せずに交渉をスムーズに持って行きたいですよね。
今回は交渉のプロが実践している「心理学をフル活用した交渉術」をご紹介します。
1 手始めにまずは情報収集『コールド・リーディング』
相手に無意識のうちに自分を語らせ、情報を引き出すというもの。
新年度になりましたので、新商品のご案内に伺いました。
ところで、朝のニュースでもやっていましたが、今日は花粉が特に酷いみたいですね。
〇〇さんや会社の皆さんは花粉症とか大丈夫ですか?
上記のように一見、関連付けされているように感じる曖昧な物事を連続して伝え、相手から情報を得ます。
お客さんは、恐らく花粉症について質問されたことへの回答からスタートし、朝のニュースを脳内で再生した後、なんとなく新商品の説明を聞く態勢に入るでしょう。
(世間話で記憶が前後し、新年度と新商品の関連が無いことに気付きにくくなりますので、なんとなくスムーズに受け入れやすくなります)
そうすることで、聞き出した情報からコミュニケーションを更に円滑に進めることが可能となります。
2 好意や信頼を獲得『ハード・トゥ・ゲット・テクニック』
相手の自己重要感を刺激し、好意や信頼を獲得する説得方法。
特別会員である〇〇さんにだけ、限定でご案内できる商品の準備がようやく整いました。
人間の基本的欲望である5つの欲望の1つに、「承認欲」があります。
「特別なあなただけに」といった特別扱いをすることによって、「承認欲」を満たすことにより、深い関係があるように錯覚してしまう心理テクニックを利用します。
たちまちお客さんはあなたに、好意や信頼を寄せてくれることになります。
併せて、希少性を訴えることで、買いたい気持ちを起こさせるテクニックにも応用可能です。
3 押すなよ!絶対に押すなよ!『カリギュラ効果』
禁止されるほどやってみたくなる心理現象。
本気で必要とする意志の無い人は絶対に買わないで下さい。
買っても使わなければ何の役にも立ちません。お金の無駄です。
人間は原則して、自分の行動は自分の意志や自分の感情で選択します。
しかし、その自由を奪われるとストレスを感じたり、反発するエネルギーが生まれます。
それをうまく活用し、禁止されるとそのことがかえって頭を離れなくなり、そのことをやりたくなってしまう欲求を起こさせることができます。
4 周囲はどうなの?『バンドワゴン効果』
ある選択が多数に受け入れられている、流行しているという情報が流れることで、その選択への支持が一層強くなる効果。
半年後まで予約いっぱいのレストランですが、特別に一席ご用意できますよ。
予約がいっぱい=多くの人が利用している⇒それなら安心
予約が取れない=みんなが行きたいと思う⇒自分も行ってみたい
上記のように日本人なら特に考えやすい傾向が強いですよね。
ラーメン屋に行くなら、行列が出来ている店に入るか、ガラガラの店に入るか、答えはひとつですよね。
「みんながやっていることなら正しい」と思ってもらうテクニックです。
5 〇〇さんはいつも△△ですよね『ラベリング効果』
決めつけるようにラベル(レッテル)を張ると、本人はラベルに貼られた行動を次第にとるようになる、という理論。
あいつ(営業マン)の資料は中身はもちろん、見た目もよく出来ているから、他のメンバーも真似するんだぞ!
こうすると営業マンは「資料作りが得意」というラベルを貼られたことになり、まるで周囲の期待を裏付けるかの如く、資料作りの面で、ますます出来る営業マンになっていきます。
交渉の場面でも、こちらの思惑通りの展開に向けて、先に相手にラベルを貼ってしまうことにより、
有利に交渉を進めることができる訳です。
6 交渉は大きな要求から『ドア・イン・ザ・フェイス』
最初に難度の高い要求を出して相手に拒否させておき、それから徐々に要求水準を下げていく話法。
それでは明日までに購入するかご決断してください。
今日明日は決定権者が不在だからそれはできないと?
それであれば、今週末までに最終確定のご連絡を頂けますか?(こちらが本来の目的)
人の心理として、それがどんなに非現実的で大きな要求だったとしても、「断る」ことで何かしらの罪悪感を持ってしまいます。
この後ろめたさを解消するために、人が「受けた物事に対して何らかのお返しをしようとする」心理に働きかけるテクニックです。
7 二択で攻めて断らせない『ダブル・バインド』
一度に二つの選択肢を送り、受け手がそのどちらかに応答しなければならなくなる状況を作る方法。
A案とB案、どちらにしましょうか?
交渉の場では、最後の最後で最終的な決断が下される場面が多くありますが、それ故、あと一歩というところで判断に迷うなんてこともよくあります。
そんな時に特に有効となるのが、このダブル・バインドです。
「契約するか否か」で悩んでいたはずが、いつしか契約することが前提に、二択のどちらかに応答しなければならなくなる状況を簡単に作り出せます。
【まとめ】いかがでしたでしょうか?
多くのテクニックが早速今日から使えるものかと思います。
心理学を活用した交渉術の理屈が分かれば、ビジネスやマーケティングにも応用できますので、臨機応変にご活用ください。